在日米海兵隊の公式サイト(日本語版)を検証する ③ 『支払われた借地料』の謎
在日米海兵隊が運営する日本語の公式サイトは、「これは印象操作だろ!」と言わざるを得ない情報が満載だ。
特に『在沖縄米軍がもたらす経済効果』というページは、沖縄に駐留する在日米軍が、「どれだけ沖縄の経済を支えているか」ってことを必死でアピールしたい在日米海兵隊報道部の渾身の一作だ。(2017年10月3日現在)
オスプレイ不安クラブは、そんな在日米海兵隊の日本語版公式サイトに掲載された情報を検証している。
第1回では、「在沖縄米軍」という組織が存在しないにもかかわらず、その幽霊組織が沖縄の経済に大きく貢献しているかのように語る在日米海兵隊の狙いはなんなのかを追求した。
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第2回では、「在沖縄米軍」という組織が存在しないにもかかわらず、その幽霊組織が沖縄の労働人口の約1.26%にすぎない労働者を「使用」しているだけなのに、自らを「沖縄で2番目に大きな雇用主」と称し、沖縄県の雇用に大きく貢献しているかのように語るのは、大きな誤りであることを指摘した。
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そして今回は『在沖縄米軍がもたらす経済効果』というページにある『借地料』に関して検証してみる。
【検証 ③】『支払われた借地料』って、誰が、なぜ、支払った?
在日米海兵隊は、『現在、沖縄県内には3万4千人以上の軍用地の地主がいますが、平成26年度に支払われた借地料は1,000億円近くとなっています。』と主張する。(2017年10月3日現在)
米軍基地や自衛隊基地が民有地もしくは地方自治体が保有する公有地にある場合、地主に借地料を支払っているのは日本国民だ。
在日米海兵隊が掲載した一文に、1,000億円近くの借地料を『誰が支払っているのか』を示す主語はない。
しかし、日本国民の血税で支払われている軍用地の借地料を在日米海兵隊が『在沖縄米軍がもたらす経済効果』というページに掲載しているのは、サイトを閲覧する人たちに対し『沖縄県民が1,000億円近くの借地料を貰えるのは、在日米軍のおかげだ!』という印象を与えるためでしかない。
これが 印象操作 でなければ、なんなのか!
日本政府は、全国に国有地を保有している。日本本土の自衛隊基地や在日米軍施設の大半は、日本国の国有地に置かれているため、高額な借地料は発生しない。しかし、
沖縄にある軍用地は、その大半が民公有地であるために、毎年、借地料が発生する。
では、「なぜ沖縄では民公有地に軍隊がいるのか」を理解するには、沖縄の軍用地の歴史的背景を確認する必要がある。
太平洋戦争中、沖縄には第32軍(沖縄防衛守備軍)が配置された。第32軍は、農民から土地を接収し、それら農地を日本軍が使用するための飛行場などに変えた。
しかし、それら飛行場は、沖縄島や伊江島、その周辺離島に上陸した米軍に次々と占領されていった。また、米軍は空爆や艦砲射撃で焼け野原となっていた民有地を重機で整地し、軍用車輌や戦車が通行できる道路を建設し始めた。
沖縄ではめったに見かけないロータリー。嘉手納飛行場近辺の軍用車両の渋滞を緩和するため米海軍設営部隊によって建設された。(撮影日: 1945年 6月14日)
さらに米軍は、戦闘に必要な物資、武器、弾薬、燃料を保管するための貯蔵施設を建設 し、輸送と荷下ろしが可能な港湾施設を建設し始めた。
激しい地上戦の最中に米軍は、沖縄の住民に投降を呼びかけ、応じた者たちを収容所に入れて隔離したが、その間に集落や農地を奪っていったのだ。
ホワイトビーチに第7建設大隊によって作られた仮設浮桟橋 (撮影日: 1945年 5月17日)
そして、占領した日本軍の飛行場を米軍の戦闘機や爆撃機が発進できるように整備し、沖縄島の各地に新たな滑走路を建設した。
沖縄の南寄り普天間の西海岸沿いのくずで覆われた丘を切り取って作られたB-29スーパーフォートレス専用滑走路。長さ7,500フィート、幅200フィート、石灰岩で覆われたこの重爆撃機滑走路は1945年6月15日に第806工兵航空大隊によって建設された。(撮影日: 1945年 6月30日)
米軍は、前線に戦闘部隊を送り日本軍と陸上戦を展開したが、後方には建設部隊や兵站部隊を置き、米軍基地の建設を進めたのである。
これが、沖縄戦前、戦中の沖縄の『軍用地』の姿である。
米軍による土地の接収は、戦後も続いた。
組織的な戦闘が終わった後も、日本国が正式に降伏した後も、沖縄の住民は収容所内で管理され続けた。家畜のようにフェンスの中に閉じ込められている間、住民の家屋は焼かれ、潰され、農地は重機で整地され、米軍のための基地へと変貌していったのだ。
第二次世界大戦が終わったあと、朝鮮戦争、ベトナム戦争、冷戦に直接関与していったアメリカ合衆国は、日本国に主権を回復させた後も、沖縄を米軍基地として使用し続けた。いわゆる、『Keystone of the Pacific(太平洋の要石)』である。
その頃、米海兵隊は岐阜県や山梨県に駐留していたが、日本本土で巻き起こった米軍基地反対運動を危惧したアメリカ合衆国は、東洋一の米軍基地となっていた『沖縄』に海兵隊を移すと決めた。日本国としても、遠く離れた沖縄に米海兵隊が移駐してくれたら都合がいい。
アメリカ合衆国と日本国の利害が一致したのだ。
米海兵隊を受け入れることになった沖縄では、またもや住民の土地が接収され、農地や集落は、フェンスの中へと消えていった。
軍用接収地 宜野湾伊佐浜 「金は一年土地は万年」の幟(撮影日: 1955年 7月)
在日米軍による沖縄の民公有地の軍事使用は、沖縄が日本国に復帰しても続き、今に至る。
『一般社団法人沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)』のウェブサイトには、次の記述がある。
『先祖代々受け継いだ土地が占領及び米軍の基地政策によって強制的に接収された(1945年)ことに端を発し、その後、本土復帰(1972年)に際して日米間で締結された沖縄復帰協定により、日米安全保障条約及び地位協定が適用されて現在に至るまで、長期に亘って継続的に使用されています。
その上、広大かつ立地の良い地域を使用していることから地域の健全な発展や開発を著しく阻害し、いびつな形で市街地が形成されるなど、地域の開発を歪めています。しかしながら、軍用地は依然として地域の開発・発展から取り残されているのが現状です。』(2017年10月3日現在)
なぜ、沖縄県にある軍用地に多額の借地料が発生し続けるのか。
それは、日本国民が米軍という外国軍の駐留を民公有地で許可し続けるからである。
先に記述したように、本土における軍用地の大半が国有地であるのに対し、沖縄の軍用地は、住民から強制接収した農地や住宅地だ。以下も「土地連」のサイトに掲載された文である。
『沖縄県はこれほど狭小な県土にも拘らず、全国における米軍専用施設の約74%が集中し、沖縄本島の県土の約19%を軍用地が占めています。
また、他都道県では国有地が平均約89%と大半を占め、民公有地が僅かであるのに対し、沖縄県では民公有地が施設全体の約66%を占めることから、県民に対する負担が多いことがわかります。
特に、中部地域においては平均で約93%以上を民公有地が占めています。』(2017年10月3日現在)
地主に借地料を支払うのは当然のこと。だが、地主が軍用地として使用されることを拒否しても、『安全保障』という魔法の言葉を使えば、国は地主の権限を越えて米軍に土地を提供することができるのが現状だ。
日本国民が、このような不条理を黙認し続けているのは、沖縄に対する差別であり、沖縄を軍事植民地として差し出していると言っても過言ではない。
在日海兵隊の公式サイトは、米軍が強制接収した土地に対して日本が支払う借地料を『経済効果』という恩着せがましい言葉を使い、誤魔化している。
『借地料を支払っているんだから文句言うな!』とか、
『軍用地がなくなれば、沖縄の経済は破綻する』とか言って脅すのは、
沖縄に多くの米軍基地を押し付けた側の罪悪感や差別意識を隠すためである。
さて、歴史的背景を確認したところで、在日米海兵隊の日本語版公式サイトに掲載された内容の検証に戻ることにする。
在日米海兵隊は、『現在、沖縄県内には3万4千人以上の軍用地の地主がいますが、平成26年度に支払われた借地料は1,000億円近くとなっています。』と言っている。
「3万4千人」とか、「1,000億円近く」とか、在日米海兵隊は、これらの数字をどこから拾ってきたのだろうか。人数や額を掲載するわりには、出典も明記せず、バックアップする資料やリンクの掲載もない。
これが、公式サイトであることに驚くばかりである。
在日米海兵隊とは、その程度の組織なのだ。
当クラブは、土地連のウェブサイトに掲載されている『軍用地料が沖縄県経済へ及ぼす経済効果調査』という資料を確認した。調査書によると、調査期間は平成26年9月18日〜平成27年3月25日までで、調査実施機関は、「株式会社りゅうぎん総合研究所」とのことである。
その調査書の13ページ「4.軍用地料による沖縄県内への経済効果試算」には、
『・沖縄県軍用地等地主会連合会の会員である 23 地主会に所属している地主数は約 42,000 人となっており、これを上記の地料層に当てはめると地料の階層は以下の通りになる。 (なお、県内に軍用地主は約 44,000 人〜45,000 人とみられるが、本調査では、調査の正確性を持たせるため同連合会の会員数約 42,000 人で試算した) 』とある。
https://www.okinawa-tochiren.jp/wp-content/uploads/research2_merged.pdf
土地連が4万2千人から4万5千人という地主数を出しているのに対し、在日米海兵隊が示したのは「3万4千人」。その差は8,000人から11,000人と、かなりの開きがある。
在日米海兵隊は、なぜ軍用地主数を実際よりも少なく見せる必要があるのだろうか?
なお、土地連がいう「軍用地主」には、自衛隊基地に土地を持つ人たちの数も含まれているようだ(同調査書の1ページ参照)。
在日米海兵隊が出した「3万4千人」とは、沖縄にある米軍基地だけに土地を持つ地主数なのかもしれない。だが、出典や資料を掲載しない状態では、我々から「勝手に思いついた数字では?」と言われても、反論できないであろう。
そして、調査書の15ページには、在日米海兵隊がいう『借地料』にあたる『軍用地料』に関し掲載がある。それによると、平成24年(2012年)に支払われた軍用地料の総額は、932億9,800万円であり、その額は米軍基地と自衛隊基地を合わせたものである。
https://www.okinawa-tochiren.jp/wp-content/uploads/research2_merged.pdf
調査書は、数字の出所を「沖縄県基地対策課」としている。
そこで、在日米海兵隊が主張する「平成26年」の借地料が「1,000億円以上」なのか、沖縄県基地対策課の統計資料を確認することにした。
統計資料の 「2. 基地と経済・財政」には、「4 賃借料・損失補償 http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/chijiko/kichitai/documents/h28toukei08.pdf」という項目がある。
そこに掲載された数字を見ると、平成26年に支払われた「米軍基地賃借料」の合計金額は、「84,514(百万円)」とある。84,514(百万円)とは、「845億1,400万円」ということだ。
おかしいな。在日米海兵隊が主張する「1,000億円以上」ではないゾ。
一応、平成26年に支払われた「自衛隊基地賃借料」の合計金額を確認してみた。その額は「12,774(百万円)」とある。12,774(百万円)とは、「127億7,400万円」であるが、米軍基地賃借料と自衛隊基地賃借料の額を足したとしても、沖縄県の軍用地主に『借地料』として支払われた額は『1,000億円以上』にはならない。
こうなると、在日米海兵隊の日本語版公式サイトは、『在沖縄米軍がもたらす経済効果』を過大に見せるために、『軍用地主の数を実際よりも少なく、借地料を実際よりも多く表記している』と言われても仕方がない。もう、この時点で印象操作などではない。
これは、フェイク、虚偽 である。
【今回のまとめ】
● 在日米軍またはアメリカ合衆国が沖縄県にある軍用地の借地料を支払っていないにもかかわらず、在日米海兵隊の日本語版公式サイト内の『在沖縄米軍がもたらす経済効果』というページに毎年支払われている借地料の額を掲載するのは、明らかに印象操作である。
● 沖縄県にある軍用地の大半は民公有地なのは、戦前から戦後にわたり日本軍と米軍に農地や住宅地が強制接収されたからである。
● 民公有地を使用し続けたいのであれば、借地料を支払うのは当然であるが、地主が軍用地として貸し出すことを拒否しても、国は強制的に使用することができる。日本国民がそれを黙認しているのは、沖縄に米軍基地を押し付けたいからである。
● 在日米海兵隊は、沖縄県内の軍用地主数を少なく数え、借地料を多く示した。出典や資料も掲載せず、裏取りもできない形で出す情報は、もう印象操作ではなく、フェイク、虚偽をばら撒くためである。
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次回は、在日米海兵隊が主張する『個人関連消費』について、突ついてみる。
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